人を投げる、ボールを投げるのと何が違う? 金丸真翔2022年4月25日読了時間: 3分皆様こんにちは、ご無沙汰しております令和4年卒の金丸です。さて本日は普段の部活動の様子をお伝えするブログと異なり、コラム企画となります。先日のブログとHPの一本化に伴って4年生はコラムを書けとのお達しが出たため、今回は柔道の立ち技の部分から、人を投げるという点について掘り下げてみたいと思います。では今一度、柔道経験者の方も未経験の方も「ものを投げる」とはどういう技術なのか、何が必要なのか少し考えてみて下さい。投げると言えばボールや槍、ハンマー、鼻をかんだティッシュ、匙など。まあ匙は少し違いますが私生活、多くのスポーツの中で必要とされる動作です。ではこれらのスポーツのトップ選手、例えば大谷翔平選手は柔道をやれば強い選手なのでしょうか?否、恐らくそうはならないでしょう。柔道の強さだけを見れば一橋柔道部員の方が強いはずです。それは何故か。投げるという動作一つを取っても腕や肩の動き、投げる対象の性質、投げる目的、投げ方の選択肢が柔道と野球では全くもって異なるからです。ボールを投げる際、本来であれば投げる方向に足を踏み出し、重心移動や腰と上半身の回転を意識し、ボールを持つ腕はしなるように体の後ろ側へ残るはずです。その後、肘、手先の順で前に進め、腕が伸び切るタイミングでリリースといったところでしょうか。これが約150gの動かない「ボール」をより速く投げる技術です。一方で柔道が投げる「人」とは50~100kgほどあり動いたり抵抗したりするもので、野球と同様の技術で人を投げようとすると、まず足を踏み出す重心移動が出来ず、相手にぶら下がるような形になります。その後、既に後方にある腕では力を伝えることが出来ず、相手が少し動けばむしろ肩が外れるもしくは肘の靭帯が伸び切ることになります。このような事態を避けるために柔道選手が考えるのが重心という概念です。物理のテコの原理を思い出してください。柔道の投げは全てこれの応用だと言えます。相手の人間が板、相手の体重がかかる足元を作用点とし、攻撃を仕掛ける部分が力点、そして相手を掴む釣り手及び引き手が支点となります。この際、重心より作用点側に力点をつくることが出来ればより少ない力で作用点を持ち上げることが出来ます。つまり、柔道とは相手の重心とこちらの力点の位置関係をより有利にすることで相手を投げる競技と言えます。そして投げる動作の話に戻しますが、柔道ではむしろ投げる対象物の方向へ足を踏み出し、重心より作用点側を攻撃できるポジションへ移ります。その後、腰や上半身の回転は支点となる腕ではなく、相手と接触する足や背中に伝え、相手の重心移動が完了したと同時に相手に力を伝えることとなります。この際、腕は支点としての役目を果たすため、関節を固めて上半身と一体化させます。こうすることで肩が外れるどころか自分の倍近く体重がある選手のことさえ投げることが可能となるのです。実際にはもっと複雑な動きをしていますし、もちろん例外もあります。さらに相手の妨害の中、フェイントや駆け引きをしながら、大別して68種類の投げ技を様々なコンビネーションで用います。こうしてみると難しそうに聞こえますが、大事なことはこの中から一つでも得意な技を見つけることです。テコの原理と得意技一つがあれば格上選手に勝つことだって無理ではありません。どんな体型、運動歴の人でも、運動神経が悪くても活躍の幅が広いのはこういった理由だと思います。以上コラム企画でした。最後まで読んでいただきありがとうございました。R4年卒 金丸
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