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国宝

こんにちは、3年の堀部です。本日の練習には入江さんがいらっしゃいました。暑い中ありがとうございます。また、他の部活に所属してる中村くんが見学に来てくれました。私を含む数名は知り合いで、その圧倒的な体躯と小学生の頃の柔道経験から即戦力なのですが、現時点では入部は難しいとのことです。しかし現在所属してる部活を引退したら入部したいとのことなので、引き続き連絡を取ろうと思います。


さて、皆さんは今話題の映画と聞かれて何を思い浮かべますか?そうです、李相日監督『国宝』です(このブログは鬼滅の公開前に執筆し温めておいたものです)。歌舞伎役者の生涯を描いた作品であり、公開以降もっぱら高評価しか聞かなかったので思わず見に行きました。結論からいうと、間違いなく今年を代表する映画作品になると考えております(興行収入で鬼滅に劣るであろうことはさておき)。


とはいえ私は巷であまりに話題な映画、特に人気若手男優が主演の映画は劇場で見ることは少ないです。なぜなら客層が悪くなりがちだからです。今回もお隣はおしゃべりなマダム2人で、高校生も沢山いました。女子高生2人組が「ライブ会場みた〜い」なんて話していたので、最近の若者はどうやら映画館よりも先にライブ会場を先に体験するようです。サブスク普及の影響でしょうか?


本題に入ると、『国宝』は2人の主人公が女形の歌舞伎役者として大成していく物語です。うち1人の喜久雄(吉沢亮演)はヤクザの跡取りとして生まれ、父親を抗争で亡くし15で歌舞伎役者の家に引き取られます。そこで出会った跡取り息子の俊介(横浜流星演)と出会い、共に切磋琢磨し、そして師の逝去、後継争い、スキャンダルなどを経験して「国宝」へと近づいていきます。


私は以前本作を原作で読みました。高校時代に読んだ小説の中では一番印象深い作品なので、映画化発表を聞いて待ちきれない思いでした。しかし気になったのはボリュームです。原作はハードカバー2冊、計800ページにも及び、映画もてっきり上下二作になると思っていたら3時間弱に収めたと聞き仰天でした。そして映画を見るとやはり複数のシーンを削っています。


ですが結論からいうと全く不満のない改変です。全く飽きさせない脚本で一本の映画として完璧な構成でした。一例として、原作では喜久雄が幼い娘を病で亡くし、その他の不幸が重なった末彼は絶望の淵に追いやられるのですが、劇場版ではその娘自体無かったことにして妻に逃げられる展開で代用しています。しかしここで「重く」しすぎないことでシームレスに後半の展開へ移行するという意図があったのでしょう。


そしてこの映画の一番の魅力は、なんと言ってもその演出と演技力でしょう。そもそもこう言った演劇ものを映像化する上でのネックは、文字で語られる至高の芸には一役者がどう頑張っても辿り着けない、即ち原作ファン・演劇ファンほど失望しやすくなるというジレンマです。小説や漫画だからこそ読み手に解釈の余地を与えられる、というのが決してこれらが映像の下位互換でないことの表れなのですが。


予め断っておくと私は歌舞伎は一度しか見たことがないのですが、しかし本作は一味違うと感じました。代表的なのは作中で2回演じられる『曽根崎心中』です。本来の歌舞伎と演技で真っ向勝負しても勝てない、ならば映画にしかできないことをすれば良い。本作で最も巧みに用いられているのはカメラワークです。魅せたい演技では表情にズームし、役者の視点を表現したければ背中から撮影する、といった感じです。


映像処理も拍車をかけています。序盤から登場する女形の人間国宝である万菊(田中泯演)の演技では、動きに残像を出したり舞台を幻想的に描くなどして、喜久雄らだけでなく鑑賞者にも感銘を与えます。そしてそのイメージと父の今際の雪景色が喜久雄に影響を与え、舞台に拘り続ける理由となっていくという、見事な原作補完に戦慄さえ感じました。


加えて、喜久雄を演じる吉沢亮の演技力も圧巻でした。演出の素晴らしさについて語りましたが、当然限界はあります。そして歌舞伎の女形という難役のため、主演の2人は演技指導に1年をかけたと聞きました。また作中で稽古のシーンを見せることで一層完成度の高さを魅せています。正直若手人気俳優の演技なんて…笑と馬鹿にしていましたが、過去の邦画も見返したい気分です。


長くなってしまいましたが、原作のディティールとそれを損なわない脚本、圧巻の演技力とそれを最大限高めた演出、総じて間違いなく最高峰の作品でありました。これを機に歌舞伎ファンが増えるのは間違い無いですし、日本の伝統芸能を描き切った作品として世界に広まって欲しい限りです。これを読んでいる皆さんも公開終了までに必ず見に行ってください。


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3年 堀部

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